デスマスクは呟き、その横に腰を下ろしたカミュが言葉を漏らす。
「でも、シュラもまだ余裕じゃないですか? それに微妙に拳を逸らして、
当たらない様に手加減しているように見えますけど?」
「まぁ〜な。 一応、寸止めっていう条件だからな。でもあの分じゃ、ペース
乱されるのは・・・」
そう呟くデスマスクに、カミュも頷く。
「熱くなりすぎだぜ、ミロの奴。」
デスマスクが言葉を漏らした途端、ミロの攻めに入った攻撃がシュラを捕らえた。
シュラは首だけを下に向け、その攻撃をかわすと、腕時計のアラーム音に動きを
止めた。
「おっと、時間だ」
「真面目にやれよッ!」
ミロが怒りを漲らせ、拳を放つ。
が、それを手のひらに納めると、シュラはニッと笑った。
「約束があるんだ。 悪いが今日はここまでだ」
シュラはミロに背を向けると、軽いステップでその場を後にする。
「逃げんのかよ!」
ミロは煮え切らない思いをぶつけるように、シュラに言い放つ。
だが、シュラは首越にミロに視線を投げただけで、緩く微笑むと早足で立ち去る。
シュラに闘志を削ぎ取られたミロは、イラ立たしげに地面の砂を蹴り上げた。
観客席の石段に座ったデスマスクとカミュに目線を移し、シュラは微笑む。
「何だ、もう引き上げるのか?」
デスマスクがぼやくようにシュラに声を掛けた。
「ああ、約束の時間だから。」
シュラが微笑するのに、デスマスクは彼の気持ちが既にここに無い事を見抜く。
「まったく、愛妻家も結構だが、尻に敷かれているんじゃないのか?
顔が緩んでるぞ」
呆れてデスマスクが肩を上げるのに、カミュもつられるように微笑む。
「何とでも。」
余裕の態度でシュラはデスマスクの軽口をかわすと、彼らに背を向け、石段を
駆け上がって行った。