無限3        

デスマスクは呟き、その横に腰を下ろしたカミュが言葉を漏らす。
「でも、シュラもまだ余裕じゃないですか? それに微妙に拳を逸らして、
当たらない様に手加減しているように見えますけど?」
「まぁ〜な。 一応、寸止めっていう条件だからな。でもあの分じゃ、ペース
乱されるのは・・・」
そう呟くデスマスクに、カミュも頷く。
「熱くなりすぎだぜ、ミロの奴。」
デスマスクが言葉を漏らした途端、ミロの攻めに入った攻撃がシュラを捕らえた。
シュラは首だけを下に向け、その攻撃をかわすと、腕時計のアラーム音に動きを
止めた。
「おっと、時間だ」
「真面目にやれよッ!」
ミロが怒りを漲らせ、拳を放つ。
が、それを手のひらに納めると、シュラはニッと笑った。
「約束があるんだ。 悪いが今日はここまでだ」
シュラはミロに背を向けると、軽いステップでその場を後にする。
「逃げんのかよ!」
ミロは煮え切らない思いをぶつけるように、シュラに言い放つ。
だが、シュラは首越にミロに視線を投げただけで、緩く微笑むと早足で立ち去る。
シュラに闘志を削ぎ取られたミロは、イラ立たしげに地面の砂を蹴り上げた。
観客席の石段に座ったデスマスクとカミュに目線を移し、シュラは微笑む。
「何だ、もう引き上げるのか?」
デスマスクがぼやくようにシュラに声を掛けた。
「ああ、約束の時間だから。」
シュラが微笑するのに、デスマスクは彼の気持ちが既にここに無い事を見抜く。
「まったく、愛妻家も結構だが、尻に敷かれているんじゃないのか?
顔が緩んでるぞ」
呆れてデスマスクが肩を上げるのに、カミュもつられるように微笑む。
「何とでも。」
余裕の態度でシュラはデスマスクの軽口をかわすと、彼らに背を向け、石段を
駆け上がって行った。