「私相手では本気になれないというなら、自分から組み手に誘ったりするなよ」
「んにゃ、怪我の功名って奴さ、後で治療してもらうさ、カミュにね。」
軽くウィンクして、ミロはカミュの顔を伺い見る。
ミロは視線を移動させ、暇そうに眺めているシュラとデスマスクにターゲットを
絞った。
「どっちでもいいや、俺に組み手付き合ってよ」
そう言って、ミロは不敵な笑みを漏らす。
シュラとデスマスクは顔を見合わせると、おもむろにじゃんけんを始めだす。
パーを出したシュラに、デスマスクはチョキを振り振り、
「ご指名よ、いってらっさい。」
と、シュラをからかい送りだした。
「ちぇッ、貧乏クジだ」
ブツブツと文句を言いながら、身体を軽くほぐすように首を左右に振り、シュラは
コロッセオの場内に降りて行く。
先ほどのカミュとの組み手には見られなかった闘志が、ミロの全身から漲っていた。
「・・・マジ?」
シュラはやや、呆れ気味に息を漏らすと、ゆったりと身構える。
「寸止めだけど、手加減はなしだぜ」
ミロの言葉に、シュラも不敵な笑みを漏らした。
「どこからでも、どうぞ。」
その彼の言葉を合図にしたように、ミロの拳が唸りを上げ、シュラの顔面を捕らえる。
が、首を軽く右に傾け、それをかわすとシュラは口端を上げ、微笑む。
「甘いな、脇がガラ空きだぜ」
身体を屈め、シュラは下方からミロの身体の脇を狙って拳を繰り出す。
だが、ミロとて黄金聖闘士、そうそう簡単に攻撃を決めさせては名折れというもの。
そのシュラの拳をバック転でかわしながら微笑する。
「甘いのは、そっちだろ!」
ミロはシュラを挑発して、彼の冷静な判断を崩そうとする。
が、シュラがそんなミロの手に乗るはずもなく、次々と急所にあたるミロの身体の部分に
拳を繰り出してきた。
それを全て避けながら、ミロは攻撃の機を伺う。
「さっきと全然違うじゃないか、ミロの奴」