無限1

今日も陽射しが強い。ギリシャの日中の陽射しは容赦が無い。
陽の光は、全ての生き物、生けとし生けるものに恵みを与える。
が、その反面、強すぎる陽射しは害を及ぼす事もある。
そんな強い陽射しを手で遮りながら、シュラは自宮を下る石階段から仰ぎ見た。
目線を戻し、軽いステップで五段飛びづつ石階段を降りて行く。
心なしか、気分が弾んでいるのか、彼は歌を口ずさみながら聖闘士たちがたむろしている
コロッセオに足を運ぶ。
特に強制という訳ではないが、聖闘士としての力を維持する為に体を動かす事は彼の
日課になっていた。
程なくして、コロッセオに到達すると、観客席にあたる場所である石段を歩いて行く。
「今日も嫌になるくらい、いい天気だな」
石段に腰を掛けている巨蟹宮の主に声を掛けると、声を掛けられた主、デスマスクも
ややうんざり気味に返事をしてくる。
「まったく・・・」
闘技場の場内に眼を移すと、何組かが組み手をしている中にミロとカミュの姿を見つけ、
シュラは小さく言葉を漏らした。
「カミュの奴、手加減しすぎだな。」
「ミロの方が遠慮してるんじゃないか? なんせ、大事な恋人の顔でも傷つけたら大変だ、
なんて思ってやってんじゃ、手だって抜きたくなるだろうよ」
からかう口調で、デスマスクがいやらしい笑いを漏らす。
「まぁ、黄金同士の組み手じゃ、50%の力でもセーブしすぎるって事はないけどな」
シュラはその光景を眺めながら、ミロの攻撃の甘さを指摘した。
その指摘が以心伝心でもしたのか、ミロの攻撃の甘さにイラだったカミュが、彼の顔面目掛け
拳をヒットさせる。
「真面目にやらないから、痛い目みるんだ!」
カミュの怒気を含んだ声が、倒れ込んだミロに降り注ぐ。
「あらま。恋する男は辛いね〜」
シュラは肩を上げ、ミロに同情する言葉を紡いだ。
「お前相手に、マジで組み手なんか出来るかよ!」
ミロのその言葉を聞き、観客席で傍観していたシュラとデスマスクは大笑いをする。
カミュはミロの言葉を情けなく感じたのか、呆れた表情でやや顔を紅葉させ、
ミロを助け起こすのに手を貸す。