無限12

「放して! もう、どうすんのよ、・・・着替え持ってきてないのよ!」
「その辺、干しておけば? 天気も良いから、すぐ乾くさ」
彼は、彼女を解放しながら、ニッコリ微笑んだ。
「干してるその間は、私に裸でいろ、って言うの?」
フェリスは水から上がりながら、僅かに怒気を含んだ声でシュラに
言い放った。
「俺のタンクトップ着てなよ。 まぁ、俺は裸でも嬉しいけどね。」
肩を上げ、シュラは彼女にウィンクする。
彼の人事にも取れる態度に、彼女は諦めたため息を漏らし、水から
上がった。彼女は長衣を脱ぐと、それを絞り、木の枝にそれを引っ掛けた。
パタパタとそよ風が、木の枝に干された彼女の長衣を揺らす。
フェリスはシュラに言われた通り、彼のタンクトップを着込み、木の根元に
腰を下ろした。
シュラも水から上がり、彼女が丁寧にたたんだ、残された下着とジーンズ
を履くと彼女の横に腰を下ろす。
木陰から差し込む陽射しに、ふたりは会話もなく、しばしの沈黙に身を委ねる。
フェリスは両足を抱え込むと、少しでも体温が逃げないように身体を丸める。
陽気が良い、と言っても、真水に浸かった体はそよぐ風にでも、熱を急速に
奪う。彼女の唇が僅かに震えているのに、シュラは視線を移し、
「寒いのか?」
と、彼女に尋ねた。
「少しだけ・・・」
彼女は小さく彼に答える。
突然、彼女のその身体が、シュラの方に強く引っ張られた。
シュラは自分の膝の上に彼女を乗せると、優しく抱きしめる。
「この方が少しは、あったかいだろ?」
微笑む彼と視線が合うと、フェリスは今まで失った体の熱が一気に回復したような
感覚に捉われた。
だが、彼の視線の先が、彼女の胸元に集中しているのに、フェリスは赤面して
眉根を寄せる。
「何所、見てるのよ!」
「ん〜、いいアングルだな〜と、思ってさ・・・」