「放して! もう、どうすんのよ、・・・着替え持ってきてないのよ!」
「その辺、干しておけば? 天気も良いから、すぐ乾くさ」
彼は、彼女を解放しながら、ニッコリ微笑んだ。
「干してるその間は、私に裸でいろ、って言うの?」
フェリスは水から上がりながら、僅かに怒気を含んだ声でシュラに
言い放った。
「俺のタンクトップ着てなよ。 まぁ、俺は裸でも嬉しいけどね。」
肩を上げ、シュラは彼女にウィンクする。
彼の人事にも取れる態度に、彼女は諦めたため息を漏らし、水から
上がった。彼女は長衣を脱ぐと、それを絞り、木の枝にそれを引っ掛けた。
パタパタとそよ風が、木の枝に干された彼女の長衣を揺らす。
フェリスはシュラに言われた通り、彼のタンクトップを着込み、木の根元に
腰を下ろした。
シュラも水から上がり、彼女が丁寧にたたんだ、残された下着とジーンズ
を履くと彼女の横に腰を下ろす。
木陰から差し込む陽射しに、ふたりは会話もなく、しばしの沈黙に身を委ねる。
フェリスは両足を抱え込むと、少しでも体温が逃げないように身体を丸める。
陽気が良い、と言っても、真水に浸かった体はそよぐ風にでも、熱を急速に
奪う。彼女の唇が僅かに震えているのに、シュラは視線を移し、
「寒いのか?」
と、彼女に尋ねた。
「少しだけ・・・」
彼女は小さく彼に答える。
突然、彼女のその身体が、シュラの方に強く引っ張られた。
シュラは自分の膝の上に彼女を乗せると、優しく抱きしめる。
「この方が少しは、あったかいだろ?」
微笑む彼と視線が合うと、フェリスは今まで失った体の熱が一気に回復したような
感覚に捉われた。
だが、彼の視線の先が、彼女の胸元に集中しているのに、フェリスは赤面して
眉根を寄せる。
「何所、見てるのよ!」
「ん〜、いいアングルだな〜と、思ってさ・・・」