【私が貴方にあげる物】
「HAPPY BIRTHDAYカガリ。今日は俺達が目覚めた日―――誕生日だよ。今日はおめでたいから
沢山美味しい物を用意したんだ。カガリの大好物もあるぞ」
エプロン姿でテーブルに食卓の用意をしていたアスランは、遊びから帰って来たカガリを驚かせた。
何と、目の前にあるのはびっくりするくらいの料理の数々。
メインディッシュを中心にデザートも多種用意されていた。
しかもテーブルの真ん中にはケーキまである。
今日朝、彼は何も言っていなかった。
カガリはいつものようにフレイ達と遊び歩いて帰って来たのである。
いつもなら捕った獲物を分けて食べるだけだから料理も何もあるわけがない。
料理なんてどっかの家に招待された時にご馳走になるだけだった。
「……」
「どうした?」
「……」
「何かあったのか?」
アスランは黙ったまま俯いているカガリの側まで来ては、そっと顔を覗き込む。
何かご機嫌ななめの様子だ。
う〜んと考えて見て、漸く気が付く。
「カガリ…もしかして、まだこだわっているのか?」
そう、彼女がずっと前から言い続けているのは――――生まれた(目覚めた)時間。
ずっとこだわり続けているのだ。
するとカガリは俯いたまま頭を横に振って否定した。
どうも違いらしい。
では何だろうか?
う〜んと眉根を寄せて考える。
「あっ、昨日お菓子を無断で食べたこと叱ったの、まだ怒っているのか?」
お菓子大好きな彼女は食べ過ぎて、逆にご飯を食べられなくなる。
きちんとご飯を食べないと身体に悪いのだと注意して、お菓子は勝手に食べない決まりにした。
それをカガリは昨日こっそり食べて怒られて半べそ状態になっていたのだ。
昨日の今日で彼女は朝も機嫌悪く、あまり口を聞かずにさっさと出掛けてしまったのだった。
カガリの為を思って注意したのだが、怒鳴り過ぎたかなと反省する。
折角の誕生日。
二人で祝おうと計画した。
カガリに驚かせたくて内緒にしていた。
「うわ〜〜い!凄〜い!」と喜ぶカガリが見たくて一生懸命作ったのに、暗い表情で黙って俯く姿に
落ち込んでしまう。
――やはり昨日叱らなければよかった。
こんな風にならなかったのに…。
ず〜〜〜〜ん↓↓↓と落ち込むアスラン。
カガリの両肩に手を置いて「ごめん」と小さく謝る。
「昨日は叱り飛ばしてごめん」
今度はアスランの方がうなだれた。
すると今の今まで無視していたように黙していたカガリが、がばっと顔を上げた。
「ち―――違うっ!!」
アスランの目とぶつかった瞬間、叫ぶ。
「そんなんじゃない!昨日は私の方が悪かったんだ。だからもう気にしてない!違うんだ……
私は怒ってるんでも、機嫌が悪いんでもなくて……」
最初は割れんばかりの声を発していたが、徐々に小さくなっていって最後には口ごもる。
そのまま口を閉ざしてしまった。
「カガリ?」
鈍感なアスラン。
彼女が昨日のことじゃないと言うなら、一体何なんだ?とまたもや考え込んでしまう。
カガリは彼からの呼び声にしばし黙ってから、そっと答えを寄越した。
「……れ……と」
「え?」
「……知ら…なかった」
「カガリ!?」
「私……気付かなかった…知らなかった」
そして再び俯く。彼女は機嫌悪いのではなかった。
悲しかった。そしてそれ以上に悔しかった。
カガリは忘れていたのだ。
今日――誕生日だということを。
自分だけならまだしも、彼の誕生日でもあるのだ。
そう、今日は自分と大好きなアスランの誕生日なのだ。
しかも前年、仲間達と一緒になって誕生パーティーを開いた時、沢山の女性がアスランに群がってキャーキャー騒いで、
カガリは凄くやきもちを妬いた。
大好きなアスランをとられてしまった気がしたのである。
その時カガリは
「アスランは私のだ!!」
宣言をしてしまったのだ。
「誰も取っちゃダメ!!」
幼いカガリが兄を独り占めしたくてアスランにしがみつき、泣きながら「私のもの」宣言をしたのである。
そして次回、来年の誕生日は二人っきりで祝おうと約束したのを忘れていたのだ。
カガリはそのまま膝ま付く。
大きな琥珀の瞳から、ぽろりと涙が溢れて零れた。
「うっ――…うわ〜ん…」
両手で顔を覆い泣き出してしまった。
「カガリ!」
アスランは驚いてしゃがみ、カガリの背を抱いてぽんぽんと優しく叩く。
「ご、ごめん…なさ…ひっく」
泣きながら何度も謝る。
「私…わす…れてた…約束…たのに」
涙が止まらない。
アスランはちゃんと忘れずに今日のこの日を祝おうと、こんなに素敵なご馳走を作って待っていてくれたのだ。
それなのに自分は気付かず、朝から遊びに出歩いていて――――何も。
何も用意していない。
アスランへのプレゼントを何も用意してなかったのだ。
カガリは泣き顔を見せては彼にしがみ付き叫ぶ。
「プレゼントを見つけてくる」と―――。
それを聞いたアスランはカガリの涙の原因に漸く気付いた。
ニッコリ微笑んで答える。
「要らないよ、カガリ。その気持ちだけで十分だよ」
その緑の美しい瞳は訴えてくる。
「カガリが居てくれるだけで、いいんだ」
「アスラン…でも……」
彼の気持ちは嬉しいが、それではこっちの気持ちがいたたまれない。
自分ばかりがいい思いして彼に何一つ捧げるものがないのだ。
――何か…彼にあげられるものはないだろうか?
「アスラン……少し待っててくれ。私も何かあげたいんだ。ちゃんと物を」
必死に訴える。
何も要らないのに…とぼやくアスランだったが、カガリの決意は固かった。
困った彼は少し考えてから答えた。
「じゃあ・・・カガリをちょうだい」
「ほへ?」
「前にカガリ言っただろう、『俺はカガリのもの』って。だから俺も『カガリは俺のもの』にしたい」
それを聞いてカガリは「なんだ。そんなのはとっくの昔にそうだろう」と呟く。
「何を今更言っているんだ?変な奴だな」と笑った。
「生まれた時からずっとだ。私もアスランもずっと一緒で互いのものだろ!?」
人差し指をアスランに突き付けて当たり前じゃないかと笑う。
アスランは目を見張り、ついで柔らかな笑顔になって行った。
そしてそっとカガリを抱き締める。
「そうだな……生まれた時から――ずっと一緒、だな。互いが互いのものだったなぁ」
「うん♪」
カガリも大きなアスランの背に手を回してしがみつく。
カガリの頬にふわりと柔らかい物が触れた。
目を開いてそれを見る。
それは暖かい色を宿して美しく煌めく飾り羽根。
彼の心を反映して綺麗な彩りを映していた。
「アスラン…今、嬉しい?」
カガリはそっと飾り羽根に触れる。
「ああ…凄く嬉しい」
アスランは小さくて柔らかいカガリの身体を抱き締めて囁く。
それを耳にしてうっとりと微笑むカガリ。
その言葉通り、黄色からオレンジへと柔らかなグラデーションを映して波のように変化して行く色彩。
喜んでいるのが解る。
「私も嬉しい…」
カガリは羽根を優しく撫でながら囁く。
そしてしばし互いに抱き締め合った時、ふとカガリは思い付いた。
「そうだ、アスランにあげられる物がある!」
いきなり彼の腕の中から顔を上げて嬉しそうに叫んだ。
アスランはきょとんとなる。
何を言い出すのだろうと。
するとカガリは彼の予想を200%遥かに越える―――――天地がひっくり返るほどビックリ仰天、
目が飛び出てしまうような言葉を吐き出した。
「お前に、私のこのオッパイをあげるぞ!!」
「!!☆★×〇↑↑↑」←声にならない
「アスランはこの飾り羽根をくれた。だから私もこのオッパイをあげる」
そう言って、自ら自身の胸を手で持ち上げる。
そしてアスランに向けて無垢なる微笑を捧げた。
「ちょうど運よく二つある。アスランのも二つ(2枚)。だからぴったし♪」
良かったぞ。ちょうど二つずつある、とニッコリご機嫌なカガリ。
そして何と!!
あろうことか、Tシャツをまくしあげて生の胸をあらわにしてしまった。
どど―――ん!!と存在を現わす二つの胸。
カガリはそれをむぎゅっと寄せて上げ、アスランの目の前に差し出して来たのだ。
アスランの視線が点々と矢印線を浮かび上がらせる。
その視線の先は・・・
→→→→→→→→→カガリのオッパイ♪
―――うおおおおおおおおおっっ!!!!o(><)o
(アス、心の叫び)
――おかしい。
どうして何も言わないのだろう?
口を開けたまま固まってしまったアスランに首を傾げるカガリ。
普通なら笑って「有難う」と言うか「大丈夫だよ」と遠慮するか…なのに、何も答えてくれない。
――もしかして、気に入らなかったのかな?
そこでハッと気付いた。
「あ…ごめん。私の……小さくて」(:_;)
何と、カガリは自分のオッパイが小さくて申し訳ないと謝り出したのである。
彼女はまだ産毛も抜けない幼い鳥。
心も身体も成長しきれていない。
故に同じ歳のフレイやミリアリアより身体が小さく、胸も成長しきっていなかった。
彼女達より一回りも小さい己の胸。
その小さい胸を見て溜息吐き、一気に落ち込んだ。
「ごめん…アスラン。私のオッパイじゃ―――嫌だよなぁ、小さくて……」(/_・、)
くすんと鼻を啜る。
それを耳にして硬直していたアスランは瞬時に動き出した。
「ち―――違うっっ!!カガリのは小さくなんてないっ!!可愛くて堪らない――――いや、す…素敵だっ!!綺麗で素敵だっっ!!」
慌てて否定する。
小さくなんてない。凄〜〜く可愛いと鼻息荒く絶賛する。(フンフン種馬の如く)
それを受けてカガリは「ホントか!?」と問えば、うんうん♪と何度も何度も壊れた振り子のように頷く。
「じゃあ、あげる♪」
カガリは万遍の笑みを浮かべ、アスランの正面ど真ん前でオッパイをど〜〜〜〜〜ん!と見せた。
カガリの動きに呼応して、ぷるんと揺れるオッパイ。
「〇×★↑↑」←言葉にならない
再び固まるアスラン。
目の前には二つのオッパイ。しかも生だ。
二つの膨らみに小さな可愛いピンク色の乳首が見える。
白い肌色に淡く色付く乳首。可愛いらしい乳首、そして柔らかそうな胸。
目がくぎづけで動かない。
「どうぞ」とカガリは言っている。両手で胸を持ち上げている。
くっきり谷間が見えている。(視線集中)
「……………↑↑」
アスランはゴクリと息を飲み込んだ。
頭の中はパニックになっている。
――どうしよう…どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう
どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう
どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう
どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう
どうしようどうしよう(以下、エンドレス)
心臓は早鐘のように鳴り続けた。
ドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキ
ドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキ
ドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキ
ドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキ(以下、エンドレス)
それから約30分、微動だにしない彼に困ったカガリは、そっとアスランの手を掴んで自身の胸に触らせた。
「はい、アスラン。あげる♪」
むぎゅっ…………
ぎょえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!!!
( ̄▽ ̄;)
「―――で、その後どうなったの?『彼』は……」
フレイは頭を抱えながら眉間に幾つも皺を寄せて呟いた。
それにカガリは困った表情で答える。
「それがな……いきなり鼻血を出してそのままぶっ倒れちゃったんだ。ドターンと頭から垂直に倒れたんだぞ!
私、びっくりしちゃって必死に呼んだけど『オッパイ』でうわごと言ってるだけで気を失ったまま。パーティー処じゃなくなっちゃったんだ」
「ぷっ…くっくっくっ」
途端、笑い出すフレイ。
あはっはっはっはっ、と大笑い。
それにびっくりしたカガリは、彼女が何で笑うのかが解らなかった。
フレイはお腹を抱えて笑っている。
きょとんとしているカガリ。
フレイは涙目で笑いつつ、彼女を見つめた。
――可愛い顔して、なんと無垢な小悪魔だろうか。
兄であるアスランさえも堪らないだろう…しかも今だかつて触ったこともない(幼い時は見たり触ったりしたかも知れないが…)
生の胸を見せられ、尚且つ触ってしまったのだ。
まだ経験のない(童貞だとフレイは知ってる)彼にとって、それはあまりに衝撃過ぎた。
その場面を容易に想像出来る。そこに居て見ていたように思い浮かべられるのだ。
フレイはまた笑い出した。
「オッパイ…オッパイ…」
と鼻血を出しながら、ぶつぶつうわごとを繰り返す彼。
それを
「アスラ〜ン、しっかりしろ!」
と揺さぶって叫ぶカガリ。
多分、Tシャツはまくし上げられたままだ。
だから胸は剥き出し。
カガリが彼を揺さぶる度、ぷるんぷるんと揺れる胸。
きっと気が付いて目覚めても、どぱーんと目の前に二つの膨らみ(胸)を見て、またもや鼻血を吹き出してしまっただろう。
あはははは、と大笑いするフレイにカガリは何なんだ?とむくれ出し始めた。
それに悪かったわ、とカガリの頭を軽く叩いて先の結果を聞く。
「――それでその後、気が付いた後…『彼』――――また鼻血を出していたんでしょ!?」
「よく知ってるな……そうなんだ。また鼻血出してぶっ倒れそうになるから慌てて抱き止めたんだけど、
なんかアスランの顔にオッパイが当たっちゃったらしく――――」
「そっ!!それで―――?♪♪」←興奮するフレイ。
「……その後、もの凄く跳びはねて天井にガツンと頭をおもいっきり打ち付けてから猛烈な勢いで―――」
「勢いでっっ!?」←身を乗り出す
「―――トイレに駆け込んで行っちゃった」
「……」
「そんで暫く出て来なかった……」
「……ぷっ―――あはっ、あははは」
勢いよく吹き出して床に崩れるようにして、ぎゃはははと笑い転げる。
いつもは上品なのに、こんな笑いをする彼女にびっくりするカガリ。
「さいっっっっっっっっ――――こうよ!!『彼』」
(^O^)/
フレイは雄叫びを上げて笑い続けた。
そして数日後、フレイはアスランと会った。
その時笑いながらさりげなく耳打ちした途端、アスランはカッ!と真っ赤に顔を爆発させて、一目散に逃げ出したのは言うまでもない。
そうして暫くフレイの前に、姿を現わさなくなったとさ♪
フレイいわく……
「WCで――ナニしてたのかしらね?……アスラン♪」(にっこり)
◆ 了 ◆
※こちらのお話は、「暁の騎士地の女神」の永遠様から頂いたお話です。
本編、「風鳥恋々」の番外編のお話で、カガリのお誕生日ストーリー
になります。本編のお話は、もう、もう!とってもハートフルで、なに
と云えば、やはりアスランのシスコンぶりが、ちょー目玉な内容で
実に面白いです。お話の形態としては、鳥であったり、時には翼を
持った擬人化であっりと、不思議な展開ではありますが、恋愛や
周りのキャラたちのアクもしっかり捉えられた内容なので、とても
面白い! なによりファンタジー要素もたっぷりで、本当に良い
お話に仕上がっています。まだまだ続きではありますが、今後の
見所は、やはり兄妹としての、アスカガの関係の変動です!
個人的には、男一気奮起で、アスランには、「カガリを嫁にする!」
宣言をしてもらいたいな〜と思っている、魅力ある一作!
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