彼は、彼女のローブの腰紐を解きながら、細い首筋に唇を這わせた。
カガリも求める仕草を見せる。
熱い息を漏らし、アスランの着ていたバスローブに手を掛ける。
胸元から合わせを肌蹴させ、腰紐を解く。
いつになく、積極的な彼女に彼は薄く微笑した。
絡む、ふたりの裸体。
幾度も身体の位置を変え、唇を交わし合う。
緩く身体を起こし、アスランは両手で彼女の豊かな両の乳房を揉みあげた。
「・・・カガリ。 綺麗だよ。」
囁く彼の声に悦を感じ、カガリの身体が小刻みに震える。
彼女の足を開かせ、彼は躊躇わず顔を彼女の秘部に埋めた。
刹那、彼女の唇から高い悲鳴が漏れる。
快楽の鳴き声。
止める事が出来ない、悦楽。
女性が一番純粋に快楽を感じれる場所、小さな真珠を弄ぶように、アスランは
舌でそれを激しく愛撫する。
気持ち良い。
堪らない疼きがカガリの身体すべてを支配していく。
自然に腰が動き、彼を求める身体が応える。
彼女のなかから溢れ出す蜜が、彼に感じているのだという印を確認させた。
我慢できず、起した身体で彼女を貫けば、一瞬だけ息を詰めた声があがった。
だが、その声は直ぐに激しい喘ぎ声に変り、カガリは彼の腕に縋った。
その縋ってくる腕が、妙に心地良い。
アスランは、緩い笑みを絶やさず、彼女の身体中にキスの雨を降らす。
彼女の金の髪、眉尻、頬や鼻先へと・・・。
時々、甘く、優しく歯をたて、噛んでやれば、彼女は更に強く身体を密着させてくる。
「・・・カガリ、・・・カガリッ!」
愛しい、妻の名を呼び、彼は彼女の身体を激しく突き上げた。
彼の首筋に、彼女の両手が絡みつく。
濡れた唇で、アスランの唇に吸い付き返せば、応えを待つ間もなく、彼の舌が絡んできた。
夢中になって溺れた。
甘味な海に漂う、ふたりの身体。
きつく彼女に自身を締め付けられる度、彼は小さくうめく。
限界が近いのか。
ふたりの声音が色を増した。
「カガリッ! 俺、もうッ!」
彼が声をあげた瞬間、彼女も達してしまう。
ふたりの唇から同時に漏れた、極みの叫び。
荒い息を収めるように、アスランは彼女の肩口で呼吸を繰り返す。
「・・・?」
おかしい。
たった今、その熱い高まりを放ったというのに、彼の雄は萎えるどころか
硬さを維持したまま彼女のなかに留まっていた。
熱い。 ・・・身体が燃えるように熱かった。
彼女の頭に両腕を廻し抱え込み、アスランは再び腰を揺らし始める。
「やっ! 待ってッ! アスランッ!!」
拒否の悲鳴が、彼女の口から迸った。
即効的に快楽を得られる男性の身体と違い、女性は一度極めれば、
長くその快感を得ることが出来る。
所謂、オーガズムと呼称される状態。
そんななかを動かれることは、苦痛すら感じる。
いつもなら、カガリに対して、アスランはこんな強引なことはしない。
彼女の身体が落ち着くのを、待ってやれるだけのゆとりがある。
なのに・・・。
今日に限って、抑えが効かない。
「我慢できない。 ごめん、・・・カガリッ!」
痙攣を起したように、彼女の身体は震え、涙が金の瞳に溢れる。
泣かせたいわけじゃない。
悦ばせてあげたいのに・・・。
唇を噛み締め、アスランは歯をくいしばった。
残った僅かな理性で、動きに制動をかける。
「・・・アスラン?」
彼は、小刻みに震える身体で、きつく彼女の肢体を抱き締めた。
「・・・薬、・・・効き過ぎだ。 ・・・やっぱり飲むんじゃなかった。」
今更後悔した処で、どうか出来るわけではない。
それでも、彼女がその気になってくれるまで、なんとかしたかった。
小さく、カガリは彼の腕のなかで首を振る。
「お前を拒んだわけじゃない。」
「・・・カガリ。」
「身体が熱くて、変になりそうなんだろう?」
頬を染め、彼は起こした顔で素直に頷く。
「・・・私もだ。 ・・・もう、大丈夫だから。」
優しく笑んで、彼女は彼の唇を指先でなぞり、触れた。
待ち望み、促されたことに再度動きを再開すれば、彼女の唇からは、妖しく
甘い吐息が洩れ、響いた。
艶かしい、艶声。
・・・堕ちる。
彼の逞しい腕に絡めとられ、底無し沼にでも落ちていってしまいそうな、
甘味な浮遊感覚。
強い快楽に、身を委ね、彼女は彼の背に両腕を廻した。
「・・・アスランッ! ・・・もっと、強くッ!」



求められる、彼女の声が、彼の動きに拍車をかける。
彼は、汗ばんだ顔で緩く微笑んだ。
可愛くて、愛しくて、離したくない彼女。
身体も心も、すべてをいつまでもこの手のなかに留めておきたい。
「・・・全部、俺のものだ。」
彼女の耳元で囁いた声は、強い所有の言葉。
「・・・愛してる。 アスラン・・・。」
彼の背にあった腕を移動させ、彼女はアスランの頭を抱き込んだ。
濃紺の髪に指先を埋め、囁き返す。
「俺も・・・」
返事は、深い口付け。
起した顔で、彼は彼女の唇に吸い付いた。
飽きることなく、深い口付けと浅い口付けを繰り返す。
幾度も・・・。
舌を絡ませ、溢れた唾液を舐めとる。
激しい交わり。
終わりがなかなか訪れない、夜。
互いの身体に灯った、熱い欲望の炎が収まるには、・・・
まだ時間が掛かりそうな、一夜だった。








翌日。
カーテンの隙間から零れ落ちる陽の光に、アスランは眼を細めた。
手で眩しい陽光を遮り、緩く身を起こす。
昨夜は、どのくらい彼女と身体を結び合わせたのか。
三回目くらいまでは覚えていたが、後はどうでもよくなって数なんか
覚えちゃいなかった。
今日が休日で本当に良かった。
ほっ、と胸を撫で下ろす。
太陽が黄色に見えるなんて、何年ぶりだろう。
恋人時代、新婚当初は、そんなことも度々あった。
今はそれなりに落ち着いてきていたせいか、こんな風な気だるさは久し振りだ。
コーディネイターである、彼。
体力にはそれなりに自信があるが、こんな疲れを感じる朝は、思考の巡りも鈍い。
しかし、なんとも云えず、充実した気分なのも、否めない事実。
自然に頬が緩んでしまう。
残る、疲労感は仕方ないとしても、昨夜は随分と頑張ってしまった。
体力に関してのみいえば、ナチュラルのカガリの方が倍の疲れを感じている筈。
だが、昨日は特別な夜。
どんなに身体を求めあっても、尽きない欲求は増すばかりで、お互いやめられなかった。
まるで、餓えにも似た、渇望。
本能の命じるまま・・・
そんな言葉通りの交わり。
ふと、隣に視線を移せば、カガリはまだ安らかな寝息を漏らし、夢のなかの住人。
ぴくり、とも動かない、彼女。
白い彼女の裸体には、無数の赤い花が咲き乱れていた。
隙間すらない程、濃く赤い所有の刻印。
彼の視線の先が、掛け毛布のズレた胸元に注がれる。
くっきりと浮んだ、歯形の痕。
多分、行為の最中、夢中になり過ぎて噛んでしまったのだろう。
なんとなく、申し訳ない気分になり、彼はその傷痕に舌を這わせ、舐めあげた。
小さな擽るような刺激。
カガリは緩く瞼を持ち上げる。
彼の髪に指を絡ませ、彼女はアスランを詰る。
「こら。朝からなにやってんだ!?」
彼女の声に、彼は緩く笑んだ。
「治療。」
「馬鹿なこと云ってる。 ・・・んっ、・・・やっ、・・・やめッ!・・・アスランッ!!」
恥かしげな甘さを含んだ、彼女の怒った声。
が、アスランは、叱咤を受けても、その行為をやめようとはしない。
「今日は休みだし、ずっとダラけっぱなし、ていうのを具申いたします。
・・・偶にはイイだろう?」
くすっ、と彼は、彼女の胸元で笑う。
「賛成、・・・にしておいてやる。」
「感謝。」
にこにこと、嬉しそうな笑みが彼の顔から零れた。
時間に束縛されず、休日を楽しむことを決定するふたり。
腕を絡ませ合い、自然に重なる身体と唇。
アスランの指先が、カガリの背を撫で上げる。
「こらッ!昨日、あんなにしたのに、まだする気かッ!!」
「男は、朝が一番元気なの、知ってるだろ?」
薄い笑いを浮べ、アスランは彼女を見下ろした。
薬の影響は、とっくの昔に消えている。
カガリは、正気の瞳で彼を睨み見据えると、思いっきりアスランの
頭をひっぱたいた。
「なんで、叩くかなぁ?」
昨夜は、あんなに優しかったのに・・・と、文句の山。
彼に真面目に付き合っていたら、本当に起きれなくなってしまう。
僅かに痛む腰を擦り、カガリは疲れきった身体を起こし、ベッドを抜けでた。
「行っちゃうの?」
寂しげな、アスランの声が彼女を追った。
「シャワー浴びて、ご飯作る。 おなかすいた。」
色気の欠片も見せず、カガリは床に脱ぎ散らかしたバスローブを拾い、
袖を通しながら部屋に備えつけられているシャワールームに足を向けた。
それをベッドのなかから見送り、アスランは苦笑を漏らしたのだった。
時間を気にすることがない、ということは、心にゆとりを齎す。
残った僅かな眠気を満足させるため、アスランは柔らかいシーツに身を委ねる。
そして、静かに瞼を落とした。
いくらかの眠りを満たし、彼が瞼を持ち上げたのは、昼に近い時刻。
気だるそうな空気を纏った身体を起こし、アスランは一度、大きく伸びをし、
ベッドを抜け出た。
そのままの姿で、室内に設備されているシャワールームに足を向け、
熱い湯の雨を浴びる。
「・・・痛ッ!・・・」
小さくうめき、彼は浴室に取り付けられていた鏡に痛みを感じる背中を映した。
自分の背に残された、彼女の爪痕。
幾度、カガリと快楽の頂きに昇る詰めたか解らない、昨夜の出来事。
激しい情事の名残りに、彼は苦笑を浮かべた。
暫くの間は、入浴の度に痛みを伴なうのは仕方ない。
それに、一週間もすれば、このくらいの傷は、跡形もなく消えてしまうだろうし・・・
そう思いながら、彼は薄く頬を染めた。
シャワーを済ませ、ラフな普段着に着替えてから、アスランは居間に足を向ける。
部屋に入るなり、ソファで寝入ってるカガリを見て、彼は瞳を開いた。
やはり、昨夜の疲れは完全に拭えていない状態の彼女に、彼は優しく
その身体を揺すった。
「カガリ、こんな処で寝てちゃ駄目だ。寝るならベッドで。」
言葉で誘っても、返ってくるのは、カガリの生返事だけ。
呆れ、肩をあげると、アスランは軽々と彼女の身体を両腕で抱き上げた。
ベッドまで彼女を運び、彼は苦笑を浮かべたまま、カガリの額に唇を落とした。
その刺激に、カガリの瞼が震えるように持ちあがる。
「・・・ご飯、・・・作ってあるから・・・」
それだけを云うと、彼女は再び、瞼を落とした。
幾らもしないうちに洩れ聞こえる、彼女の静かな寝息。
アスランは、苦笑いを浮べ、寝室を後にした。
偶には、こんな休日もいいもんだ。
のんびり、時間に追われることのない、午後の一時。
彼女が起きてくる頃は、きっと夕方になるだろう。
夕飯の仕度は、自分が代わってやるか。
穏やかな気持ちで、彼は読み掛けの本を手にとり、庭のテラスへと
足を向けたのだった。






                                         ■ Fin ■






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