「どわぁぁ〜ッッ」
ベッドの中で突然興った彼の悲鳴というか、叫びにフェリスは驚き、
上半身飛び上がるように身を起した。
「何!?何なの!!??」
寝ぼけ眼で、辺りに視線を走らせ、首を左右に振る。
そして、大元の原因である自分の横の男の顔に視線を走らせる。
眉根を寄せ、彼女はうめくように声を漏らし、シュラを見据えた。
枕もとの時計に眼を移すと、時刻は午前の二時。
迷惑の何物でもない。
当たり前だ。
「何なのよ、こんな時間に!」
彼の隣で安眠中だった、妻フェリスは突然の彼の悲鳴にも似た叫びに
驚いたものの、またか・・・と一言呟き、冷淡にも思えるほど、あっさりと
彼を一瞥すると、眉根を寄せる。
自分の枕を頭から被り、うつ伏せ四つん這いのような格好で、まさに
頭隠して尻隠さず状態のシュラに、彼女は呆れたため息を漏らす。
これが、聖闘士の最高峰を占める最高位、黄金聖闘士の姿かと思うと
実に情けない格好だ。
彼女はそんな彼を敢えて無視するように、彼に背を向けると、また眠りを
貪るための準備に自分の枕を整え、横になる。
そんな彼女の態度を枕の隙間から伺い見るように、シュラは視線を送る。
その彼の眼尻には僅かに涙が浮かんでいるのだから、更に輪を掛けて
情けない状態だ。
彼女の関心が自分にないのを悟ると、シュラは多少の怒りも感じたが、
そんなことで腹を立てても仕方がない。
彼女の安眠妨害をしているのは、他ならない自分なのだから。
彼は枕を頭から外し、ため息を漏らすと、ベッドの中央に枕を投げた。
べっとりと纏わりつく、自分の流した冷や汗が心地悪い。
のろのろとベッドから這い出すと、シュラは浴室に向かった。
纏わり付く汗を流せば、ひょっとしたら少しは心地よい眠りが訪れるかも
知れない。僅かな期待をしながら、彼はシャワーの栓を捻る。
流れ出した冷水にも近い、その水を被りながら、シュラは考えを巡らす。
シャワーノズルが掛けてある壁に両手を付き、ため息を漏らす。
何故?・・・何故・・・自分があんな夢ごときに翻弄されなくてならないのか、
まったくと言っていいほど、検討が付かなかった。
そして、シュラは奇怪な行動を取り始める。
首越しに自分の臀部を見据え、片手でまさぐるようにして触った。
一体、何をしているのかは、結論がでるには後数日を必要としたのだが。