『 大切 』







のどかな日差しが降り注ぐ、午後の時間帯。
柔らかい日の光が、ふたりの頬にぬくもりを与える。
本邸のヘリポートから、“元”我が家という名称で果たして正しいのか
どうか… 思うところではあるが。
マーナが今も健在で取り仕切っている屋敷の裏道、すなわち
アスランとカガリが結婚を機に構えた家へと辿る道。
今や、懐かしくなってしまった、という表現になってしまうだろう、元の家。
現在の家主の名義人は、娘夫婦の共同名義になっている。
懐かしい、と回顧してしまう家を離れて、どのくらい経ったのか。
今日、ふたりがここを訪れている理由は、実はお呼ばれだったりする。
年若く、とてもふたりの外見からは『孫』が既に3人も居るなど、誰が思うか。
そして、その孫の存在を甘受しながら、誰よりも「おじいちゃん」という
銘々を嫌っているのが、アスラン本人なのだから、いい加減全面降伏して
現状を認めたらどうだ?とは、妻、カガリの言。
幅広くとった、私道。
もとは、昼なお暗い森と茂みであった、本邸裏の、そこ。
ふたりの結婚を境に、キレイに整地し、現在の状況に整備を施し新居を構えた。
両サイドには、道成りに腰丈ほどの高さで揃えた、葉量の多い生垣。
その奥は、背丈のある林。
適度に間引き、管理が施されているので、森のような鬱蒼とした暗さは感じられないように
配慮されている。
今歩いている、この道。
実に面白い作りになっており、個人資産として数えられるアスハの所有物のなかには、
乗馬用の馬も含まれる。
特別に作らせた厩には、管理人が常時待機していた。
数十頭はいるサラブレッドの健康、栄養、と幅広く管理、監督、時には調教すら手がけることが
できる者がいるほどのハイクラスな環境を整えている。
ちょっとした育成牧場並みである。
あくまでも、自然繁殖を重視しているので、血統は貰い受けた馬以外は、あまり拘りはない。
放し飼いのように牧草が茂る草地に放し、そのなかでカップリングができれば、そのままつがいにするのだ。
カガリいわく、動物だって決められた相手より、好き合ったもの同士のほうが良いに決まっている、と
言い放ったのは、アスハ家の名言になったとか、ならないとか。
随分昔、一頭だけ、カガリが気にいっていたお気に入りの葦毛がいた。
幼馬の頃、病気で病んでしまった前右足。
そのハンデを克服するため、自身で特殊な走り方を習得した、葦毛の雄。
その速さは、どんな調教を受けた馬たちよりもぐんを抜いて素晴らしいものだった。
俊足の馬脚を見込まれ、カガリが特別に調教を頼んだのは、彼女の女友達。
鍛えられた馬体。
コース場では、レコード記録を叩きだすほど見事な成績を収めた。
そして、その優秀な成績を収めた功績が買われ、繁殖用種つけ馬として貸し出しをしていたこともあった。
ひとや車だけでなく、その他の生き物も行き交うことができるよう工夫された、道。
実際、緑地豊かなおかげで、リスや、小鳥たち、時には狸や狐まででることがある。
小動物たちが住まうオアシス的な役割も果たしている、この場所。
そんな様々な経緯もあり、馬道としても兼ねているので、レンガ素材を使用したソフトアスファルトを
中央に挟んで、両脇は芝生を植え込んだ道成りになっていた。
道両脇は、鮮やかなグリーンの芝生。
中央は車が通れるよう配慮した、オレンジ色のソフトアスファルト道。
もと素材がレンガなので、水捌けも良く、環境にも優しい。
配色のコントラストが強力過ぎて、眼に潤いがあるかどうかは疑問ではあるが。
それはさて措き、本邸のヘリポートからの徒歩である、ふたり。
距離的には、元家へは1.5kmほどある。
車を廻すと、女中頭のマーナから進言を受けたが、敢えてそれは丁寧に辞退した。
散歩がてらに、天気もいいから歩いていく、と言ったカガリを、マーナは強く引き止めなかった。
彼女の性格を乳母だからこそ、そして長い付き合いだから熟知しているが故に。
足に優しい、馬道用の芝生道を歩きながら、カガリは大きく伸びをする。
両手を組んで、空高く。
「ああ!気持ちイイ!海風も好きだけど、森林浴は別の意味で別格だ!」
その、愛妻の言葉に、隣を一緒に歩んでいた夫の顔が苦笑いを零した。
「あ!そう言えば…」
カガリは、ひとりごち、着ていたデニムジーンズの後ろポケットを弄る。
でてきたのは、小さなカード。
「はい、これ。渡すのが当日になってしまったが、サクラから、大好きなパパへの
招待メッセージだ。預かっていたのこの処すれ違いだったんで渡しそびれてた」
半引退を決め込んでいてはみても、ふたりの政府機関での地位は健在だ。
カガリは、緊急時に措いては、将軍位であり、それをサポートするのは、夫であるアスラン。
准将の位はまだまだ本当の意味でアスランを開放してはくれない。
行政府に措いては、カガリの補佐官として。
軍務に至っては、書類処理で所謂、『極秘事項』と赤スタンプが押された種のものの処置。
本土にある、司令部に出向の形で呼び出しを受け、円満に業務が捗るよう段取りを組んでいたら、
本人の予想を裏切って、三日余りの出張になっていた、という有様。
まあ、今更であるし、いい加減熟年と呼ばれる領域に達しているふたりだから、こんなことで
揉めることなどないけれど…。
それでも、離島の新居に移ってからの初めての出来事だったので、カガリ自身、口にはださずとも
寂しさはどうしようもなかった。
昔の家なら、娘夫婦と同居であったせいで誰かしらがいたせいか、『寂しい』などという感情に
囚われることはなかった。
だから、年甲斐もなく、アスランが三日ぶりに自宅に帰ってきたときに、彼を押し倒さんばかりに
抱きついてしまって、笑われしまった、という顛末。
その後は、互いの隙間を埋めるために、熱い抱擁と確認のコミュ二ケーション。
盛り上がれば、最終地点はいわずもがなである。
殆ど、隔離ともいえる環境だから、いちゃついて、べたべたしていたって誰の視線も憚ることはない。
気がつけば、日はとっくに暮れ、星空が瞬いていた。
愛する夫の胸に、身を預けながら窓からの景色を堪能する、ひと時。
これでは伝えなければならない事柄を忘れてしまうのも致し方なかった。
もう一度、侘びの言葉を口にして、カガリはカードをアスランに渡す。
歩きながら、カードを開けば、覚えたてと思われる、たどたどしい字体が眼に飛び込んできて思わず
笑みを誘う。

――― しょうたいじょう。
こんどのバレンタインにぜひパパとママ ふたりでおうちにきてね。 サクラより ―――

内容の可愛らしさもさて置き、カラフルなラテペンを使い、キラキラシールを貼り、幼子が眼一杯の
工夫を凝らしたカードは、感嘆に値する。
くすり、と笑んで、アスランはカードを閉じ自分が着ていたジャケットの内ポケットに仕舞い込んだ。
緑の道を歩き進み、目的の家が姿を現す。
白を基調とした、二階建て仕様の洋館。
表玄関に辿り着き、礼儀に習い呼び鈴を押す。
は〜い!と、間延びした幼子の声と共に響くのは、屋内から響いてくる駆け足の音。
勢いよく開く玄関扉に、苦笑を零す。
「こら、サクラ。お客様が誰か確かめてから開けないと無用心だぞ?」
「大丈夫だよ、ここに変なひとは入ってこないから」
熟知した幼子の言に、確かにと、思わずアスランは納得して空を仰いだ。
この家に辿りつくには、まず本邸前のゲートを通らなければならない。
当然、入るにはゲートの門番から身分確認IDの提示とアポイントの有無が要求される。
家人以外のチェックはかなり厳しい。
万が一に備え、警備をするガードは銃の所持が認められている。
監視カメラはいたる処に配備、それに倣い、夜間には赤外線感知による侵入者のチェックも常時行われている。
深夜の時間帯は、見回りのガードが犬を連れてパトロールをするし、セキュリティは完璧に整えられていた。
アスランがカガリとの結婚を成就させる条件として、新居はアスハの敷地内に構える事。
それが、五氏族の長老陣から一番にでてきた条件だった。
カガリは当然として、彼女との結婚は、私人ではなく、公人へとアスランの立場を変えた。
そして、カガリの身を守る為にも、それは必須条件だった。
カガリ、という名前のひとりの女の子、とその当時一番思いたかったのは、きっと誰よりもアスラン自身だったに違いない。
けれど、彼女に纏わりつくしがらみごと受け入れると決心してからは、譲れる部分は譲るように
気持ちを切り替えていった。
新居を建てる場所は譲歩する。
それで、老人衆を黙らせた。
けれど、どうしても譲れなかったのは、『家』である。
男としての沽券が、それだけは許さなかった。
仮にも、どんな状態であれ、カガリを嫁に貰う立場なのだ。
家までお世話になるなんて、絶対に嫌だった。
幸いにも、新築で家を建てることができる財は持ち合せていたので、文句を捻じ込まれることはなかった。
あの当時は、本当に些細なことで揉め事になっていた気がする。
今となっては、土地と家のことが一番の大事で、小火に関しては殆ど忘れてしまったけれど。
なんとなくの微かな記憶は、とにかく毎日が慌しかった、ということだけ。
くすり、と笑んで、アスランは玄関に迎えにでた幼子の背丈に合わせるように腰を落とし、しゃがんだ。
「サクラ、今日はご招待ありがとう。約束通り、ママと一緒に来たよ」
満面の笑みを浮かべ、幼子の金糸を撫でると、サクラも嬉しげに笑む。
「サクラね、マミィに教わってチョコレート作ったんだよ!」
「そうか。それは楽しみだな」
甘いものはあまり得意ではない。
それでも、幼子が懸命に作ったであろう、バレンタイン用のチョコレート。
いらない、など口が裂けたって云えるわけがない。
サクラの身体を抱き上げ、アスランは玄関扉を潜った。
カガリもアスランの後ろに着いてなかに足を踏み込む。
すると、玄関から廊下に続く通路に双子の姿を認め、カガリはにっこり微笑んだ。
当然、大好きランク、第一位を占める客人の来訪に、双子が喜ばないわけがない。
強烈なアタック紛いの突進で、ツルギとヒビキに抱きつかれ、思わず尻餅をついたカガリに手を差し伸べ
立ち上がらせたのは、アスランである。
屋内に、幼子たちの導きで足を踏み入れれば、玄関を潜ったときから香る強烈なチョコレートの芳香に
一気にアスランの顔が蒼白になった。
アスランの顔色の半端でない悪さに、カガリは『大丈夫か?』と耳元で囁く。
頷くしか出来ない。
重い足取りで、廊下を挟んだキッチンに顔をだせば、ミューズが珍しくエプロンと三角巾を身につけ、
軽く右手を振った。
「いらっしゃい。」
「お邪魔します」
もとは、自分の家だったのに。
可笑しな愛娘とのやりとりに、思わずアスランは苦笑してしまう。
「パパ!降りる!」
腕のなかの幼子の要求。
アスランは、そっとサクラの身体を廊下板に降ろす。
「居間で待ってて」
サクラは微笑み、キッチンへと駆け込んでいく。
迎えにでるときに外したのだろう、子供用のピンクのエプロンを身につけ、三角巾を母親であるミューズに
巻いてもらう。
幼子の指令に従い、アスランとカガリは向かって左手に位置する居間へと入っていく。
室内に入る寸前、カガリの足元にいた双子もキッチンへと方向転換。
途端、賑やかになる台所の様が更なる笑顔を誘った。
居間には、待機していたのだろう、ミューズの夫であるイズミがふたりを迎える。
「お久しぶりです、お義父さん、お義母さん」
「君も元気だったか?」
アスランは、馴染んだ声音で、娘婿の顔を見遣る。
「お茶がいいですか?それとも…これ?」
イズミは、グラスの杯を仰ぐようなジェスチャーをアスランに見せる。
酒を飲むには、まだ時間は早かろう。
丁重に断って、アスランはカガリを共って居間の長ソファに腰を降ろした。
イズミは、ミューズと子供たちがいない間、しっかりとホストの役目を果たす。
弾む会話。
時間は、あっと云う間に夕方の時刻を知らせる。
訪問してから、二時間あまり。
やっと、強烈だと感じていたカカオの香りに慣れた頃、サクラが白の陶磁の平皿に乗せたチョコを
持って居間に姿を現す。
「お待たせしました!」
ピンクのエプロンが実によく似合っている。
溶かしたチョコレートを銀ホイルの小さい一口カップに注ぎ、飾りにはカラフルな彩りをまぶした、
カラースプレーやら、銀色のアラザン。
初心者向けの簡単なものではあるが、チョコレートは温度が命。
唯溶かすだけとはいえ、これはこれでコツはあるもので。
しかし、なによりも気になったのは、サクラの口元についている塗りたくったようなチョコレートの筋。
「口の周り、チョコだらけだぞ?サクラ」
「味見よ!味見ッ!」
懸命の言い訳に、アスランは噴出す。
「味見〜?摘み食いの間違いじゃないの?サクラ」
サクラの腰を後ろから腕に抱き寄せ、ミューズは持っていた濡れ布巾でサクラの顔を拭きやる。
さり気に取り上げた白磁の平皿は、ソファ前のローテーブルに置かれたのだが、それを狙っていたのは、双子の手先。
ミューズとサクラが視線を外した隙間に、皿のチョコレートが一気に半分、姿を消した。
頬張るツルギとヒビキの口元には、当然べったりとついた盗み食いのチョコの形跡と、口内には飲み込みきれていない本体。
気がついたサクラが、双子の弟たちに鉄拳を喰らわせたのは言うまでもない。
ソファに座るアスランと、彼の目の前にいる、可愛い孫。
天使の微笑みを称え、サクラは自分が作ったチョコを銀カップから外し、一粒摘むとアスランの口元へと運ぶ。
されるがまま、アスランはサクラお手製のチョコレートを頬張った。
ミューズの教えなのか。
子供の味付けにしては、かなりのビター味である。
おそらく、甘味は苦手なのを前提としての味付けなのだろう、と推察できた。
「美味しい?」
不安げな瞳を揺らし、サクラのオッドアイが瞬く。
「ん、美味しいよ」
「本当!?」
「本当」
嘘偽りなく、笑顔で感想を零せば、幼子も微笑み返した。
「じゃあ、もう一個!はい、口開けて、あ〜ん!」
「はい、はい。あ〜ん。」
もう、駄々漏れ、甘々。
満面の笑顔で言い成りである。
これでは、“爺馬鹿”とカガリに罵られても何も言い返せない。
「こうやって、“あ〜ん”とか云って、何かを食べさせてもらうのは、サクラで三人目だな」
そのアスランの漏らした一言を聞き齧って、サクラの顔が突如不機嫌になる。
眉根を寄せ、目の前のアスランの顔を睨みつけたのに、訳が解らず、彼は首を傾げる。
「…サクラ?」
「なんで、サクラが一番じゃないの?どうして、三番目なの?」
「……」
きょとんと呆け、暫くの間を措いて、アスランは爆笑した。
なんと、可愛らしい幼子のジェラシー。
それを目の当たりにして、サクラに悪いと思いながら、笑わずにはいられない。
「ごめん、ごめん。サクラにちゃんと説明しないと納得できないよな。一人目は、ママ。」
そう云って、アスランは自分の隣に座っていたカガリを指差す。
「二人目は、小さい頃のマミィ。で、三人目がサクラなんだよ?」
「…なんだ」
と、返事を返しながらも、まだサクラの不満は解消できていなさそう。
頬の膨らみは、餌を頬袋に貯め込んだリスのようである。
どんな手段を講じても、サクラの不貞腐れた態度は収まらない様子に、カガリが口を開ける。
「サクラ!ママにも“あ〜ん”してくれ」
途端、ご機嫌が元に戻り、幼子は懸命に給仕モドキに勤しむ。
こういう時、気分の好転を図るテクニックは、カガリには適わない。
ばちん!と合った、カガリとの視線。
アイコンタクトでウィンクをされ、アスランは苦笑を零した。
チョコレートだけを食して、はい、さようなら…ではあまりにも味気ない。
折角の久しぶりの逆訪問なのだから、と夕飯まで持成しを受け、幼子たちに強請られるまま、お泊りコースに
なる羽目になってしまった。
着替えは、背丈、体格とも殆ど変わらない、ミューズとイズミのパジャマを借り受け、引越し時アスランたちが
使っていた二階の居室兼寝室は、家具や寝具こそ持ち出してしまったので当然新しいものへとデザインは変わっているものの、
ゲストルームとして機能は健在。
ふたりが使っていた頃は、クィーンサイズベッドがひとつだったが、代わりのものはサイズがワンランク大きくなっていた。
寝具に身を任せながら、アスランはぽつり、呟く。
「楽しいひと時は、時間が経つのが本当に早いな…」
「ああ、まったくだ」
夫の呟きに同調しながら、カガリはアスランの胸元に頭を寄せた。
それに合わせるように、アスランはカガリの頭を抱き寄せる。
向かい合わせの形になった、刹那。
出入り口の扉が細く開く音に気がつき、慌てて身を離した。
「…パパ、…ママ?」
「サクラ?」
枕元の置き時計に視線を走らせれば、到底お子ちゃまが起きている時間帯ではないことに溜息が洩れる。
「どうしたんだ?もう、寝てないといけない時間だろ?」
「…一緒のお布団で寝ちゃ…だめ?」
だめ?と、念を押されれば、否定することなどできない。
「おいで。」
優しく笑んで、掛け毛布を捲った途端、
「ボクも!」
「ボクも〜っ!」
と、双子の声が続く。
驚く間もなく、三人揃ってアスランとカガリのベッドにダイブされ、呆れるしかできない。
折角、カガリと近距離になったというのに…
あっという間に距離は、遠のいてしまった。
「見事なまでに芋蔓式で大漁だな…」
アスランの溜息が移ってしまったかのよう。
カガリまで派手な息をつく。
嬉しさではしゃぐ幼子たちの声に気がつき、隣の寝室にいるミューズが目を覚まし室内を覗き込んできた。
それを、大丈夫だ、と一笑したのだが。
全然大丈夫ではなかった。
深夜の二時に、アスランの側で寝ていたサクラに蹴り落とされ、あまりの寝相の悪さに白旗をあげたアスランと早朝、
居間の長ソファで対面することになろうとは…
仰天してのは、勿論、愛娘のミューズである。
「お父さん!?なんで、こんなトコで寝てるの!?」
「…いや、…ちょっと…な」
まさか、サクラにベッドを追い出されたとは素直に言えず…
乾いた笑いを零すしかない。
「まあ、司令部の仮眠室よりは、全然ここのソファのほうが寝心地良いから…」
バツ悪く、ぽりぽりと頭を掻く父親の姿を見遣って、ミューズは溜息をつく。
「…だから、昨夜気がついたときに三人とも強制送還すべきだったのね?」
「…あんまり怒らないでやってくれ。俺が好きでここに来たんだから、わかったか?ミュー」
「…はい、はい」
大仰に溜息をついて、ミューズは空を仰ぐ。
まったく、甘いッ!、甘すぎる!と、心の中で絶叫しつつ、なんとなくでマイペースの父親の顔を見遣る。
「…頭、寝癖すごいよ?」
「あ?…そうか。」
ぼんやりと、まだ眠気を纏ったままの父親の顔を見遣って、ミューズは呆れながら苦笑いする。
シャワー借りる、と云い、立ち上がる父親の長身を見送って、ミューズは再び溜息を零したのだった。










                                               ◆◆ END ◆◆












※久しぶりの新作です。
家族ものは、やっぱり書いてて楽しいです。(笑)
当初予定していたバレンタイン当日アップはものの見事に
予定どん狂い。;;ま、そんなことは今更なんで
オレは気にしない。(爆)
今回、お菓子に絡んだ話に際し、Pocheのまろ様に
色々とご教授いただき、感謝、感謝です。
お菓子つくりなんて、オイラまったくの無縁なんで、
手作り!?私が作ったら材料費が無駄になる、クッキーなんか
買ってきたほうが安上がりだ!と言い放って、何度
子供に泣かれたかわからんので。;;
で、もうざっくりと、「お菓子の飾りで、銀色の粒々の
ヤツって名称なんていうの?」とメールしたら
速攻の返事、しかも写メ付きにびっくり!
やっぱり普段からやってるひとは対応が全然違うわ〜
はあ〜(感嘆)てな訳で、本当にありがとうございました!
まろ様!にこの場を借りてお礼をば。
今回の話は、アスランの爺馬鹿ぶりが必見です(笑)