キラが倒れた。
度重なる戦闘による疲労、そして、思いもよらぬ場所での自分の真の出生を
知ってしまったことによる、精神的な過度のストレスが原因だった。
まるで、電気のヒューズがその寿命を終えるが如く、「平気」と気丈に
盟友、アスランの質問に受け答えしながらも、自分の身体は主の意識に
逆らうように、意識の闇へとキラを引きずり込んでいった。
戦艦『クサナギ』から、キラが倒れたとの報告を受けたカガリが、キラの
様子を伺う為に、ラクスの艦『エターナル』に移乗してくる。
迷う事無く、キラが寝かせられている病室にと、カガリは向った。
カガリが扉を潜ったと同時に、キラがタイミングを計ったように眼を覚ました。
が、まだ混乱の意識の中を漂っているのか、キラの態度に落ち着きが感じられず、
偶然見つけた、カガリが持っている同じ自分の母の写真についての問いを
キラにする前に、キラの混乱を察したアスランがカガリを制し、彼女を部屋の
外へと連れ出す。
僅かに抵抗の意志を感じたカガリに、アスランは静かに言葉を紡いだ。
「・・・あいつ、ボロボロだ・・・」
その言葉に伴った意味。
・・・君の疑問に問う気持ちは解る。
けど、もう少し落ち着くまで、時間をキラに与えてくれ、という隠された意味。
アスランの気遣いの態度がカガリには素直に感じることが出来、
彼女は緩々と頷いた。
部屋の外に出たは良いが、そのまま廊下での立ち話もなんなので、
ふたりは食堂に立ち寄り、飲み物をそれぞれ手にすると、その足で展望室へと向った。
アスラン自身が、カガリとふたりきりになりたい、という気持ちの表れなのかも
知れないが、カガリは誘われるままにアスランについてきた、という具合であったが。
始めの内は、飲み物を口にしながらも、互いの言葉を発する、その言動自体が
重く、妙な息詰まりさえ、感情として湧き上がる。
「・・・早く、この戦争を終わらせないとな・・・」
不意にアスランが口を開いたことに、カガリは同意するように頷いた。
「・・・この戦争に決着がついたら・・・。カガリはどうするんだ?」
アスランは何気なく、そんなことをカガリに問うた。
「そうだな・・・。 まずは倒壊してしまったオーブの再建かな?」
彼女の立場であれば、当然でてきて当たり前の言葉にアスランは苦笑を漏らした。
「・・・後は・・・結婚したい。」
「け、結婚!!?」
飲んでいた飲み物が思いっきり気管に入ってしまい、アスランは激しく咽た。
「何で咽る?そんなに可笑しいか、私が言うのが。」
眉根を僅かに寄せ、カガリはアスランを軽く睨んだ。
僅かに赤面し、アスランは気まずそうに視線を外す。
「・・・好きな男と結婚して、子供たくさん産むんだ。・・・平凡かも知れないけど、
そいうの、女の子の夢、って言うだろ?」
真顔でのカガリの言葉にアスランは静かに視線を向ける。
不意にアスランは視線を空に彷徨わせながら、言葉を紡ぐ。
「・・・じゃあ、その旦那候補に俺がなる、て言うのはあり?」
軽く、手を挙手させるようなポーズをとって、アスランは微笑した。
「ア、アスラン!!?」
カガリは耳まで真っ赤になりながら、アスランの顔を凝視する。
「カガリのこと、好きだし・・・まぁ、結婚にはもう少し時間掛けたいけど・・・」
まだ、互いの年齢が16歳ということを考慮しての彼の言葉だったが、カガリには
重厚な響きにさえ感じられた。
赤面の収まらない顔を背け、皮肉のような拗ねたような言葉をカガリは視線を
外しながら、アスランにぶつけた。
「ア、・・・アスランにはラクスが居るじゃないか!」
「彼女との婚約は破棄したよ。」
「アスラン?」
「元々、俺たちの繋がりは政治的な意図が絡んだモノだったし、俺の父の今の現状や
ラクスの父上が亡くなった時点で、無効にも等しかったしね。・・・それに」
「それに?」
「ラクスのことは好きさ。・・・でも、恋愛感情の『好き』とは違う感情しか、彼女には
持てない・・・」
そう言って、アスランは苦笑を浮かべカガリを見詰める。
「本当の自分の気持ちでの『好き』なら、・・・カガリ、君の方が好きだよ」
まるで、プロポーズにも近いアスランの言葉に、カガリは激しい動悸と目眩すら感じた。
カガリの動揺した態度とは正反対に、アスランは苦笑を漏らすだけのポーカーフェイス。
突然に、余りにも唐突に、アスランはカガリの腰に腕を廻すと、胸に抱き寄せ、
優しくカガリの、その唇に自分の唇を重ねた。
直ぐにアスランは唇を離したが、その行為にカガリは沸騰したヤカンのように、
顔が蒸気し、熱を帯びた顔でアスランを見た。
アスランが感情を素直にぶつけ、カガリにそれを示したのは、初めてのことだったから。
余りにもカガリの顔が真っ赤なのに、アスランは可笑しそうにクスクス笑った。
「このくらいのことで、その反応じゃ、ちゃんと一からレッスンしないと、本番じゃ
気絶でもされそうだな。」
「一からレッスン、って卑猥なこと言うな! 大体、『本番』ってなんだ!『本番』って!」
「恋人同士なら、最終的に行き着くことに決まっているだろ? それに、こんなことくらいで
おろおろしてるんじゃ、結婚なんて夢のまた夢じゃないか?」
ネンネ扱いした上に、からかうにしても痛烈なアスランの皮肉にカガリはむくれる。
そして絞りだすようにカガリは言葉を吐く。
「・・・そんなモンは慣れだ!慣れッ!」
「・・・だったら・・・ちゃんと慣れないと」
再度、アスランは静かにカガリの唇を塞ぐ。
角度を変え、何度もふたりは唇を合わせた。
優しく、浅い口付けは、自然に深くなり、感情が高ぶるような口付けに変わっていった。
その時、そのふたりの感情を引き裂くように、艦内に鳴り響く警戒アラートの音に
アスランもカガリも凍りついた。
敵が近づいてる。
当然、今は守りの要になっているアスランは出撃しなければならない。
カガリもまた、自分の艦である『クサナギ』に戻らねばならない状況下に曝される。
折角の甘い時間も、今の戦火の現状は許すことをしなかった。
「いけ!カガリ、『クサナギ』に戻るんだ」
押し出すようにアスランは無重力の空間で漂うカガリの身体を押し出した。
だが、カガリは押し出したアスランの片腕を掴むと、自らアスランの身体に縋り、彼の唇を
塞いだ。そのカガリの突飛な行動にアスランは瞳を開く。
「・・・死んだら、許さないからな・・・」
「カガリ?・・・」
「・・・さっき、私に言った言葉は守ってもらわないと」
「言葉?」
「私の旦那候補になる、って話だ!」
開いた瞳に、やがて宿る優しいアスランの微笑。
「・・・ああ。」
アスランの、たった一言の相槌はカガリにも、優しい笑みを齎した。
騒がしく鳴り響く警報に、ふたりは引き裂かれるように別れ、それぞれの場所へと
足を向けた。
終わらせなければならない、戦いの終止符を自分たちの手で掲げるために。
そして、新しい未来を勝ち取る為に・・・。
今はまだ・・・羽ばたくことを止めることは出来ない、戦火の中に。
何時かは、その翼を休めることの出来る、地を目指して・・・。
= END =
☆ SEEDサイト『Candypop』かなた様のトコで
キリ番60000を踏んだリクとして、当サイトでアップ
している小説の挿絵を依頼した処、掲載させていただいた
とってもステキなイラストをいただきました!!v(≧∇≦)v
もう、雰囲気ばっちりで感動の一言!内容文にも
箔がついてマジ嬉しいです!イラストSSという形態は
初めてなので、幸せの極みそのものですね。
まずはかなた様にお礼、そして今後のサイト運営にエ−ル。
それから、遅ればせながら、カウント60000おめでとうございます。
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いたしましたので、ぜひお尋ねくださいませ〜〜
かなた様、ホントにありがとうございました!!ぺこ <(_ _)>